ランキング1位:尾崎豊「白紙の散乱」
尾崎豊の「白紙の散乱」は1992年2月に刊行された遺作写真詩集の文庫版だった。尾崎豊の言葉は、メッセージ性が強い。「冷傷」「巨大な羅列」「放熱」「墓標」「凍結」などと題する詩の中に、彼が命を賭として歌い、語り続けた心の燃焼風景が、痛ましさと優しさが交錯しながら込められている。
「自然の流れには 言葉もなければ祝福もない」(「光の摂理」)と絶望的に言い切る彼の心の風景はいかにも孤独だ。かつ激しさを内包する。
悩み多き、現代の若者の気持ちをとりこにするものがある。人生の余りに早い時期に始まる、有無を言わさない「選別」への「怒りの共感」の声であるかもしれない。
動画
▼尾崎豊「卒業」(ライブ)
▼尾崎豊「僕が僕であるために」(ライブ)
銀色夏生(ぎんいろ・なつお)
1990年代前半当時、同じように若者に絶大な人気を集めた詩人が、銀色夏生(ぎんいろ・なつお)だった。
銀色夏生はシンガー・ソングライターではないが、作詞家としても活躍している。大沢誉志幸(おおさわ・よしゆき)の「そして僕は途方に暮れる」などで有名。
当時、その素顔は謎だった。作品の中の主語は「私」になったり「ボク」になったりする。女性なのか、男性なのか? 年齢は?ーーー様々なことがベールに包まれていた。後に女性であることが判明した。
第1詩集「黄昏国(たそがれこく)」
1985年、第1詩集「黄昏国(たそがれこく)」が河出書房新社から刊行された。「精神界の吟遊詩人」というキャッチコピーだった。
続いて翌1986年、「無辺世界」が出た。「半分は興味本位、そんなに多くは期待できない」という出版社の予想を裏切ってその後「黄昏国」は30版、「無辺世界」は1993年4月5日刊行で版を重ねた。
角川書店の文庫版
さらにこの人気に輪をかけたのは、角川書店の文庫版だった。「これもすべて同じ一日」と題するものを皮切りに初期作品の「わかりやすい恋」「LESSON」「Go Go Heavenの勇気」から「ロマンス」「Balance」を経て、その後刊行された「光の中の子どもたち」「外国風景」まで全部で文庫作品は20冊を超えた。
いずれも書店の書棚から消えたことはなく、平均で10版は超えた。このシリーズに特徴的なのは作者自身の撮影した写真をふんだんに配置したこと。文庫の手軽な形態とビジュアルな感覚で、100万を超える売れ行きとなった。
動画
▼大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」